オージー気質が心地いい

2025-08-24

オーストラリアで暮らすようになって真っ先に感じたのは、「人の気質がとても心地いい!」ということです。日々の生活や交流の中で感じる、オージー(オーストラリア人)ならではの朗らかさや親しみやすさについて紹介します。

“No worries”――小さなことは気にしないおおらかさ

オーストラリアの日常で頻繁に耳にする言葉が「No worries!(ノー・ウォーリーズ)」です。

これは

「大丈夫だよ」

「気にしないで」

「大したことじゃない」

「全然問題ないよ」

という意味で、ちょっとした失敗やアクシデントにも寛大に接する文化が根付いています。ミスをしても、周囲みんなが明るく雰囲気を切り替えてくれるので、日々のストレスが自然と和らぐんです。

例えば――

友人が待ち合わせの時間に遅れて、友人が、“Sorry I’m late!”

誰かがうっかりあなたにぶつかって、その人が、”Sorry!”

次に入ってくる人のためにドアを押さえてあげて、相手が、“Thank you!”

会議の予定が急に変更になって同僚が、“Can we reschedule?”

こんな場面であなたの返事は、いつでも

“No worries!”

どんな場面でも使える万能フレーズで、本当に毎日のように口にしている気がします。もちろん時には「No worries」で丸く収めていいの?と思うこともあります。「いやいや、少しは Worry した方が…(苦笑)」なんて感じることも。

みんなが当たり前のように使うこの言葉ですが、決して心がこもっていないわけではありません。軽く笑顔で、ちゃんと相手の目を見て伝えるんです。適当に言ってない。

”No worries"文化を買いかぶりすぎかもしれませんが、僕にはオージーは“Worry”の状態でいることを嫌い、むしろ“Worry”に極力陥らないように努めている――そんなポジティブさを強く感じます。

彼らはできる限り“Worry”の反対、つまり”Happy”や“Enjoy”、“Relax”、“Take it easy”のように、前向きで気楽な状態でいることが大切だと強く無意識で考えているようです。 自分自身も”No worries”でいたいし、相手にもそうあってほしい。いや、むしろ「みんなが No worries でなければいけない」という気骨を感じます。

少し話を大げさにしているように思われるかもしれませんが、それくらい強く、僕はオーストラリアでこの空気感を感じています。

“No worries” ド定番の Aussie English ですけど、僕は大好きです。

“Mateship”――誰にでも優しいあたたかさ

“Mateship(メイトシップ)”はオーストラリア独特の仲間意識や助け合いの心を表す言葉です。

厳しい入植時代やゴールドラッシュの鉱夫同士、戦争を共に乗り越えた兵士たちの強い絆など、歴史の中で培われてきた助け合いの精神が根付いています。

オージーは「フレンドリー」とよく言われますが、その根底にはこの Mateship があると思います。ばったり会った人でも、ごくごく自然に、まるで昔からの友達と話すように会話が始まる。初対面でも妙な緊張感が一切ないんですよね。

たとえば僕の経験で、一緒に出張に行った同僚が相手先の担当者と楽しそうに話していたので「いつから知り合いなの?」と聞いたら、「いや、今日初めて会った」と。これに似たシチュエーションは幾度となく経験しました。「友達なの?」「いや、初対面」というような。なんだか不思議です。初めて話す相手とは少しぎこちなくなるものですよね。お互い少し気を使って、ちょっと声が高くなっちゃったりして。オージーはそういう気配が全くありません。初対面でも友達でも、上司でも、取引先の人でも、誰に対してもフラットに接し、自然に会話が弾みます。この潔さがとても好きです。

多民族国家となった今でもこの文化が根付いているというのは面白いです。

“Fair go”――誰もが平等!根付くフラット意識

“Fair go”カルチャーもオーストラリアの価値観の中心にあります。これは、出身、性別、社会的地位などに左右されず、誰もが平等に公平なチャンスを持つべきという考え方。人間関係でも皆が対等で、上下や主従の関係はありません。

この原則は職場の雰囲気にも反映されています。上下関係はとても緩やかで、誰でも自由に意見が言える環境があります。上司や取引先でもファーストネームで呼び合い、若手だから雑用を押し付けられることもありません。上座や下座の概念もなく、出張で運転するのはむしろ上司だったりします。食事を誰が奢るべきかといった観念や、「お客様は神様」的な発想もありません。

「誰もが平等で公平に扱われる」ことは、現代社会では当然と思われがちですが、実際に国民全体の意識レベルにまで浸透しているかというとそうでもないですよね。皆さんも思い当たる節がありますよね。しかしオーストラリアではこの意識がとても強く根付いていて、それが日常のさまざまな場面から感じられます。

Fair Go からとは少し違いますが、よく子供たちが「ずるい!不公平だ!」と不満を言う時に“Not fair!!”と言います。 典型的な場面は、

  • きょうだいや友だちが自分より多くお菓子やおもちゃをもらったとき
  • 同じことをしたのに自分だけ大きな罰を受けたとき
  • 誤解されて、自分が悪者にされてしまったとき
  • ゲームやスポーツで、誰かが「ずる」をしたとき

これをもって「子供の時から Fair Go の精神が培われている」と言うつもりはありません。古今東西、このような場面ではこどもは「ずるい!不公平だ!」と素直に言いますよね。

一方で大人になると社会の中で不公平を感じても、それを仕方ないものとして受け入れてしまうこともあります。

オーストラリアでは“Not Fair”を仕方なく受け入れてはいけない、そんな気概を感じます。

まとめ ――心地よいオージー気質

ここまで紹介した“No worries!”の精神、Mateship の仲間意識、そして“Fair go”の平等な価値観。これらが、オーストラリアでの暮らしをとても心地よいものにしてくれています。

特に助けられたのは、移住直後と子育ての場面です。

移住直後はアパートの契約、家具家電や車の購入、銀行口座の開設、新しい職場での仕事始めなど、とにかくやることが多くて、英語にも苦戦し、毎日が大変でした。

それでも「日本から来たばかりです」と伝えると、不動産屋さんも中古車屋さんも銀行の窓口でも、みんなとても親切で丁寧に対応してくれました。「日本人だから」という点も好意的に受け止められた面はあるかもしれません。中古車屋さんでは「俺も移住したては苦労した。でも No worries。ここはいい国だよ」と少し値引きしてくれたこともありました。

子育てにおいても、オージー気質には何度も助けられました。この話はまた別の記事で書こうと思います。

これからオーストラリアに住んでみたい方や、気負わず心軽やかに人との交流を楽しみたい方に、ぜひ一度この国の空気を感じてみてほしいと思います。

きっと、英語のハードルなんか軽く吹き飛ぶくらい、あなたの毎日が気楽に、のびやかになりますよ。

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